夜啼く鳥は夢を見た / 長野まゆみ

ご訪問いただきありがとうございます。

引き続き今日も長野まゆみさんです。笑

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夜啼く鳥は夢を見た

初めて読んだのは中学生の頃。

啼く」という漢字に惹かれて購入。「泣く」だけでなく啼く、哭くなどの漢字があるのですね。

少し、「夜啼く鳥は夢を見た」の好きな場面を抜粋します。

◆◆◆◆◆◆◆◆

「沼は何を呟いているんだろう。」

ぼうっと淡紅色の花が膨らんでいた。

陽炎の見える水面には、白い花が浮いている。

不思議なことに、そのほかの風景はなにも見えなかった。

「何か聞こえたかい?」

「うん。ルリルリルリって。」

水の溜まりで、半ば沈むようにして咲く睡蓮の白い花と、重たげな頭を揺する蓮の大輪とが、どちらも睡そうに咲いていた。

「それはね。睡蓮の果が水の中で溜め息をつくからさ。」

「どうして。」

「水の底にいることを誰かに気付いてもらって、其処から連れ出してほしいんだ。」

「ふうん、誰に。」

ー文庫 28頁より抜粋ー

家の中に入ると、甘やかな水密の匂いが漂っていた。居間は静かで、円卓に硝子の器に盛った水密が置いてある。頬白鳥は再び喉の渇きを思い出した。水密に手を伸ばそうとして一歩踏み出したが、眩暈を起こして椅子に沈んだ。椅子は何故か泥濘のようにやわらかく、頬白鳥は沼のことを考えながら、ゆっくりとそこにうずくまっていた。

ー文庫 126頁より抜粋ー

◆◆◆◆◆◆◆

沼に沈んでいるいるのは誰なのか。

それは人間なのか。

わからないまま夢に呑み込まれるように、ものがたりは終わってしまいます。

椅子は泥濘のようにやわらかく、沈んでしまうという感覚。

物語よりは夢のような感触を文字で味わい愉しんだ。

読み返すたび、好きな場面は変わる。

何度も読み返したいので、手元に残してある本です。

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